熊本県立劇場 演奏家派遣 アウトリーチ事業のご案内

劇場の役割として、ホールでの演奏会や舞台を企画し、実施することがありますが、地理的な条件や、 さまざまなハードルによって劇場に足を運ぶことができない人たちへ文化芸術に触れる機会を提供する ことも、劇場として求められる重要なことです。 県劇アウトリーチ事業は、市町村と共催し、小中学校や福祉施設などへ演奏家を派遣し、出前授業を実施 するものです。ホールや体育館を使った鑑賞会ではなく、音楽室などの小さな空間で、生の演奏を間近で聴き ながら、クラシック音楽や邦楽の魅力を伝えることを大きな目的としています。 この事業は、国の施策として全国の公共ホールが取り組んできたものでありますが、県劇では独自の施策として平成 16(2004)年から実施しています。当初は首都圏から演奏家を招き、小中学校に派遣していましたが、現在では熊本で 活躍する、もしくは熊本出身のアーティストを登録アーティストとして派遣しています。 18年間の活動で、アウトリーチを実施した学校・施設は延べ 452箇所、人数にして約3万1千人に達しています。 令和4(2022)年度は、10地域の市町村への派遣が 予定されており、今後はその活動を広げていくことも 視野に入れています。 県劇が実施しているアウトリーチ事業の特徴は、 授業の枠組のなかでなにを子どもたちに伝えたいの か、音をどう表現していくのか、専門家のアドバイス をもとに演奏家自身がプログラムを作成しているとこ ろにあります。演奏家の楽器や、得意分野などによっ て授業内容が変わっていくのが特徴です。 のびのびとした感性を育む 熊本県立劇場のアウトリーチ アウトリーチとは、文字通り 〝外に出て 届ける〟こと。

例えば、楽器の音がどのように響くのか体感してもらったり、実際に子どもたちが楽器に触れ、音を出してみたり、作 品の背景を音で感じてもらうなど、演奏家それぞれが工夫を凝らしたプログラムになっており、同じ演奏家でも毎年 プログラムの内容がバージョンアップされていることもあります。じっと演奏を聴いているだけでなく、子どもたちの好 奇心をくすぐるような演奏家の話しぶりや、体を動かしたり、五感をフル活動する楽しい音楽体験を盛り込むことで、 これまでに実施した事業のアンケート結果では、「授業が楽しかった」と答える子どもたちがほとんどでした。 *取材・文:山内陽子(P1-2)、撮影:白木世志一(表紙・P1-2) 子どもたちのアンケート結果 (満足度) (R1.4月~R4.3月平均) 今日の授業は楽しかったですか? 全体の96.9%の子どもたちが「とても楽しか った」または「楽しかった」と回答しています。 子どもたちにとって何が楽しかったのか、どの ように感じたのか。子どもたちの声、現場の先 生の声、教育委員会担当者の声などをP5-6 に詳しく掲載しています。 84.2% とても 楽しかった 0.2% 楽しくなかった 2.9% ふつう 12.7% 楽しかった

県立劇場と市町村(教育委員会または市町村ホール)が共催で実施します。 両者が協力し合いながら、各市町村の学校等で音楽に触れる機会を提供しているのが特徴です。 各市町村内で実施先となる 学校等を選定します。 2~3年に一度オーディションと 研修を実施し、演奏家とともに オリジナルのアウトリーチプロ グラムを作成します。 実施にあたっては、演奏家をサ ポートし、よりスムーズなアウ トリーチ実施に努めます。 県立劇場の業務 開催市町村の業務 (教育委員会または市町村ホール) ・開催日の調整 ・実施先の下見、打ち合わせ ・アウトリーチの実施 県立劇場と開催市町村が連携して行う業務 各市町村からの希望提出 ・開催時期、実施コマ数などの希望 開催地の決定と担当者説明会 ・開催時期、実施コマ数などの決定 開催日程とアーティストの決定 ・校長先生、音楽教諭、担任の先生と 相談し開催日程やアーティストを決定 派遣先の下見・打合せ ・劇場職員が同行し、担当教諭と打合せ アウトリーチの実施 演奏家の選定、連絡調整 実施先(学校等)の選定、 連絡調整 保護者や地域の方をお招き してもいいですか? 普段通りのリラックスした環境で アウトリーチを受けていただきた いため、児童・生徒(と先生方) のみを対象としております。 費用はどのくらいかかりますか? 1コマ当たり3万円をご負担いた だきます。また、ピアノを使用する 際は調律料も必要となります。 新型コロナウイルス感染症対策はどの ようにしているのでしょうか? クラシック音楽公演運営推進協 議会などが定めた最新のガイド ラインに準拠した上で、各学校 の方針により対応します。 状況によって、会場を音楽室か ら体育館に変更するといった対 応が挙げられます。 演奏家派遣アウトリーチ事業のスキーム 実施までの流れ 小学校に勤めるAさん 教育委員会のBさん よくある ご質問 FAQ 9前月年頃 4月頃 前実ま施で3カ月 前実ま施で1カ月

K U M A M O T O P R E F E C T U R A L T H E A T E R これまで筆者は、熊本県立劇場の演奏家派遣アウトリーチ事業(以下、県劇アウトリーチ)を多く視察し、また令和3・4年度 の登録アーティスト・オーディションとその後の研修にも関わってきた。そこで音楽教育学者という立場から県劇アウトリーチ(教 育普及事業)の取り組みが、子どもたちの音楽的な感受や経験に与える効果について考えてみたい。 県劇アウトリーチの特徴を一言で表現するとすれば、それは「アーティストの個性を大切にしつつ、多様な専門家とともに、子 どもの音楽的な感受や経験について徹底的に考え抜いたコラボレーションの結果による実践」である。従来の音楽鑑賞教室 が客席と舞台を隔てて、子ども(受け手)と演奏家(送り手)を二分してしまいがちなのに対して、県劇アウトリーチは、そこに関 わる人もモノもすべてが対等にコラボレートして音楽する場をつくる。この考えは、クリストファー・スモールのミュージッキングに 通じると私は考えるが、その大きなうねりの中心に多感な子どもたちを据える。このような普段とは異なる芸術的で異質な空間の 中に入って影響を受けない子どもはいないといっても過言ではない。 県劇アウトリーチは、原則として、1回の実践を1クラス単位に絞って比較的小さな教室で実施する。そうすることで、間近に楽 器を見て、アーティストの息遣いや演奏が震わす空間を身体全体で感じ取ることができる。また子どもたちは、各曲の間に楽器 や曲についてアーティストから話を聞くことで興味関心を深め、曲を聴く耳を育てる。さらに、例えば、クイズをしたり、ピアノの下 にもぐって聴いてみたりなど、子どもたちの積極的な参加を促す手立てを盛り込むことで、その場にいる全員がコラボレートして 音楽する空間をつくる。県劇アウトリーチは、音楽の持つ力とアーティストの実力を信じつつ、無批判に頼るのではなく、音楽が 最大限に子どもたちへ伝わるよう吟味、構成するのである。このようなコラボレーションを経て、子どもたちは自分たちが主体的 に関わっているという思いを強く持ち、普段の授業とは異なる空間の中で、幅広い音楽の世界へと知らず知らずの内に誘われ るのではないだろうか。 この経験を後々の音楽的な学びに昇華させるのはもちろん教師たちである。県劇アウトリーチを通してそれが可能なのは、実 践前に県劇のスタッフによるコーディネートで学校の教師と対話を重ねるからである(また時には、アーティストがその場に同席 することもある)。その内容はアーティストに伝えられ、アーティストは自分のプログラムを各現場に合わせて調整する。さらに実践 後の検討も怠らない。繰り返しになって恐縮だが、子どもたちに提供するプログラムは、さまざまな分野の専門家とともに多角的 な視点から構成、再構成を重ねたコラボレーションの結果なのである。このように実践の1つ1つに対して、多くの専門的見地に よる多角的な視点から作り上げ、また毎回の実践は批判的検討を通して改訂に改訂を重ねるプログラムだからこそ、後々まで子 どもの記憶に残る芸術体験を保証できるのだろう。 演奏家派遣アウトリーチ事業の 特徴と、その教育的効果 瀧川 淳 音楽教育学者。国立音楽大学音楽学部准教授。 2021年3月まで熊本大学教育学部准教授。2018年度から2021年度まで 熊本県立劇場文化事業評価委員を委嘱、アウトリーチ事業をはじめとする文 化事業の視察・評価に関わっていただきました。2020年7月熊本県立劇場 主催「ケンゲキ・オンラインスクール~音楽を聴こう知ろう」を監修。 学校でのア ウトリーチ ・専門家の 声 専門家から見た アウトリーチ

アウトリーチに参加して (R1~R3年度アンケート結果) 楽器を演奏してみたくなった コンサートに行きたくなった 今日の授業のことを、家族に話したくなった 前よりも、音楽のことが分かるようになった 前よりも、音楽が好きになった 今日の授業は楽しかったですか? これまでに、今日のような楽器の演奏を 目の前で聴いたことがありましたか? 今日の演奏を聴いて、やりたくなったことはありますか?(複数回答可) 産山学園は義務教育学校であり、1年生から9年生(小学1年生から中学3年生)が在籍しています。今回 箏演奏家である小路永さんをお招きしてのアウトリーチでしたが、箏の素晴らしい音色や響きに学園生全員 が引き込まれたのは言うまでもありません。また、学年に応じた箏に関するお話やクイズでも楽しむことができ、 学園生の感想の中には「今後箏の演奏をしたい」というものもあり、将来の夢の一つとして考えることができま した。学園生の心にしっかりと刻まれたアウトリーチでした。ありがとうございました。 令和3年度アウトリーチ事業実施校 産山村立産山学園 (アーティスト:小路永 和奈さん) 現場の先生の声 跳ねて弾いたり、こするように弾いたり、指で弾いたりして 面白かった。(コントラバス) ・ 実際にピアノをくぐってみて、普通に聞くよりも音が大きか ったし、なかなか体験できないだろうと思うからよかった。 (ピアノ) ・ 楽器の細かいところまで教えてもらった。音楽のことが少 しわかってよかった。(ヴァイオリン) ・ 声帯や鼻腔など初めて知りました。歌い方のコツや呼吸 などのやり方が分かりました。今度から歌うときは教わっ たように歌ってみたいです。とてもすてきでしたし、とって も楽しかったです。(メゾソプラノ) ・ クラリネットをよくみたことがなかったので、初めて知るこ とがたくさんあって楽しかったです。(クラリネット) ・ 今日、箏は、色んな気持ちが込められてるということが知 れました。箏の演奏を聞いていたら、もっと聞きたいなぁと 思い、段々と夢中になっていっていたので自分でもびっく りしました。(箏) ・ かなしくなったり、楽しくなったり歌でひょうげんできるなん て、とてもびっくりしました。声が高くて、びっくりした。ピアノ がとてもはやくてびっくりした。また、あんな音楽を聞きた い。(ソプラノ) ・ - 特に ここ が楽しかった!!- 1739 1277 1854 1622 2084 0 500 1000 1500 2000 2500(人) 84.2% とても 楽しかった 0.2% 楽しくなかった 2.9% ふつう 12.7% 楽しかった 2,705 R1~3年度 45.6% あった 54.4% なかった 2,705 R1~3年度

K U M A M O T O P R E F E C T U R A L T H E A T E R 楽器に触れたり、音色が変化するたびに子ども達の表情がコロコロと変化していて、教師 自身も子ども達の表情を見ているのがとても楽しかったです。心から音楽を楽しむことがで きる良い機会だったと思います。 ・ ピアノの中の構造なども、模型を使って丁寧に説明していただいたので、子どもたちの興味 関心が広がった。普段の授業でなかなかできることではないので、とてもありがたかった。 ・ 子どもたちの輝く瞳からも感動が伝わりました(普段なかなか見られない表情、反応でし た)。私もとても感動しました。 ・ 教育委員会担当者の声 新型コロナウイルス感染症の影響により様々な行事が中止や規模縮小等せざるを得ない状況において、子供 たちになんとか文化芸術を鑑賞する機会を提供したいという思いから、今回事業を実施させていただきました。 アウトリーチ事業は、単なる鑑賞会ではなく、演奏を聴く以外にアーティストが直接子供たちに語りかけるなどし て、交流が生まれるというところが最大の特徴だと思います。感染防止対策を取ったうえでの実施でしたので、交 流の中では一部制限したものもありましたが、実施後には「将来は、音楽に関わる仕事も考えてみようかなと思っ た」といった感想も聞かれるなど、子供たちに音楽の素晴らしさが十分に伝わった事業となりました。 産山村教育委員会 コントラバスのアウトリーチ メゾソプラノのアウトリーチ ※マウスシールド着用、距離を保った実施 箏のアウトリーチ CD で聴くよりも迫力があって、音色もきれいでした。 ・ ヴァイオリンの音がきれいで、想像しやすかった。 ・ 私は、一番ゴジラの鳴き声の所が面白かったです。コントラバスの音がとっても気に入った ので、また聴きたいです。 ・ クラリネットは5つに分けられることを初めて知りました。クラリネットで4オクターブも出ると聞いてびっくりしたし、生き 物や人の心まで、クラリネットで表現できてすごかったです。クラリネットを吹きたいと思いました。 ・ 箏の種類が色々あることを知れました。授業では説明されてなかったことだったので聞いていて楽しかったし、驚きが ありました。演奏かっこよかったです! ・ 初めて目の前で歌声を聞いて、声がとても出ていて曲や役によって声が変わっていたのはすごいと思いました。これ からは音楽の授業などで歌うときは自分の声のひびきなどを確かめながら歌いたいと思いました。 ・ 声が高いけど大きくてきれいでした。ピアノも教室に通っているけど、今日のような演奏は初めてでした。 ・ 家の人に話したいくらいとても素敵な音楽が聴けて良かった。今まで聴いた中で一番だった。 ・ 子どもの感想 (抜粋) 先生の感想 (抜粋) 演奏家派遣 アウトリー チ事業・学 校での反応

池澤真子 ソプラノ 熊本県合志市出身。2019 年東京学芸大学卒業。2021 年東京音楽大学大学院修士課程修了。東京音楽大 学大学院オペラ『夕鶴』つう役にて出演。第 40 回熊本県高等学校独唱コンクール金賞受賞等、多数受賞。 第56回熊本県新人演奏会出演。2022年Wiener Musikseminar( オーストリア ) を受講、ディプロマ取得。 上京して6年目の夏、熊本でアウトリーチ事業が行われていると知りました。混沌としたコロナ 禍真っ只中で音楽を学ぶ私は、故郷の盛んな文化活動に感銘を受け、不安の中応募を決断しました。 授業で歌うことが出来ない、マスクを付けた子どもたちの前で、マウスシールドをつけ距離を取り歌っ ています。それでも、子どもたちはキラキラした目で真剣に聴いてくれます。表情が隠されていても、 歌っているこの体にエネルギーが伝わってくることを毎回実感します。 アウトリーチで私が出会った子どもたちは、自然豊かな地に育ち、澄んだ瞳を持つ子ばかりです。 そんな子どもたちを前に何を伝えたいのか、どんなことを感じて欲しいのかを追求すればするほど、 自分の感じる音楽の魅力とは何か、そもそも何故自分は歌っているのか、と自分自身を問うように なりました。まだ踏み出したばかりの道ですが、私自身の成長が少しでも熊本のためになるのなら この上なく幸せです。 緒方愛子 ヴァイオリン 熊本県菊池市出身。福岡教育大学卒業。同大学大学院修了。全九州高等学校音楽コンクールにて金賞受賞。北 九州芸術祭にて部門優秀賞受賞。日本演奏連盟主催新人演奏会にて九州交響楽団と共演。国内外の音楽祭に参 加し研鑽を積む。現在、広島交響楽団ヴァイオリン奏者。アウトリーチ活動等、各地で演奏活動を行う傍ら、 後進の指導にあたっている。 教員をしていた母が教えてくれた「カルテット・スピリタス」のアウトリーチ。その内容に感動し、 私も参加したい!と思ったことがオーディションを受けるきっかけになりました。 2日間のオーディションを受け、採用後に3日間の研修が行われ、そこで自分がどんな曲を子ども たちに伝えていきたいのか、真剣に向き合う日々でした。専門家といっしょにプログラムを組み立て、 授業を実施し、子どもたちのダイレクトな反応をもとにまたプログラムを考える。この研修期間で 得たことは今の演奏活動の基盤になっています。 登録してから約10年、広島への移住、結婚、育児…いろいろなことを経験する中で子どもたちへ 伝えたいこと、伝えたい作品は変化していきました。アウトリーチを通して、得るものは多いです。 子どもたちにこれを伝えたい、と向き合えば、子どもたちからのフィードバックが返ってくる。 それによって自分にもいい影響があるような気がしています。 県立劇場のアウトリーチ事業には、オーディションによって選ば れた熊本県在住または県出身のアーティストが参加しています。 近年ご協力いただいているアーティストの皆さんに、実施にあたって の想いやアウトリーチの魅力を語っていただきました。 近年ご協力頂いている アーティスト

K U M A M O T O P R E F E C T U R A L T H E A T E R 熊本県出身。国立音楽大学卒業、東京学芸大学大学院修士課程修了。鎌田直純氏に師事。第 13 回九州音 楽コンクール一般クラス金賞、第33 回飯塚新人音楽コンクール入選、第44 回フランス音楽コンクール第 2位、第 19 回日仏声楽コンクール入選。現在、東京二期会、日本フォーレ協会、各会員。東京学芸大学、 三幸学園、各非常勤講師。洗足学園音楽大学準演奏補助要員。 熊本県出身。京都市立芸術大学音楽学部音楽学科管・打楽専攻卒業、同大学大学院音楽研究科修士課程 器楽専攻修了。クラリネットを田尻洋一、髙野栄次、藤井一男、高橋知己の各氏に師事。現在、熊本県 立劇場協力アーティスト、Cheers Trio メンバー、熊本交響楽団団員、その他クラリネット教室を主宰 する等、後進の指導にも力を入れている。 私は大学院を修了してすぐに熊本に帰り、地元で音楽に貢献したいと思っていました。しかし どういう形で音楽活動をしていこうか…と考えていたある日のことです。新聞に、アウトリーチ 事業の紹介とそのオーディションがある旨が掲載されていました。こんな夢のような事業(演奏 家にとっても子ども達にとっても!)があるのかと記事を読んで感動し、「これぞ私の求めていた もの!」と迷わず応募しました。 実際に子ども達の前で演奏をすると、彼らの素直な反応やこちらを見つめるキラキラと輝く瞳 に、自分の心の方が洗われるようでした。アウトリーチの良さは、少人数で、近い距離でコミュニ ケーションできること、そして生でしか感じられない息遣いや音を体感できることだと思います。 私はこのアウトリーチにとてもやりがいを感じていますし大好きなので、これからもたくさん の子ども達のもとへ音楽をお届けに行きたいです。 皆さん、「メゾソプラノ」という声種をご存じでしょうか。私はメゾソプラノ歌手として、日々 演奏活動を行なっている歌手の1人です。今回、熊本県立劇場のアウトリーチ事業に応募したきっ かけは、「メゾソプラノ」の魅力を伝えたいと強く思ったからです。そして、人は皆「声」とい う楽器を持っています。この「声」という楽器を、子ども達自身が自ら愛し、大切に育ててほし いという気持ちを胸に、アウトリーチ事業に参加しています。実際にアウトリーチを行なってい く上で、子ども達の素直な反応は、とても刺激的で驚くことばかりです。日々の公演やコンサー トで感じる距離感とは異なる生の反応は、アウトリーチの魅力の1つではないかと感じています。 演奏だけでは伝えきれない課題やもどかしさを私自身痛感していますが、熊本県立劇場の皆さん のサポートやご助言の数々によって、次は違う視点から伝えてみよう、教室の外から歌い始めて みたらどうなるだろう等、悩みが絶えず胸がときめき続いています!このときめきを、私だけの メゾソプラノの声を通じて、表現し続けたいと強く思っています。子ども達との時間を設けてく ださる熊本県立劇場の皆さんに、心より感謝申し上げます。 福岡大学及び平成音楽大学卒業。その後文化庁派遣海外研修生として英国王立音楽院修士課程修了。深 澤功、ダンカン・マクティア、グレイアム・ミッチェル各氏に師事。イーリングフェスティバルオブミュー ジック(ロンドン)、宮日音楽コンクールグランプリ等受賞。Cheers Trio、Bottom line strings メンバー としても活動中。現在、長崎OMURA室内合奏団団員、平成音楽大学非常勤講師。 私にとってのアウトリーチとは『私が大好きな音楽・コントラバスを好きになってほしい』 ということです。 大好きな楽曲の魅力がどこにあるのか、私はコントラバスの何が大好きなのか。そして、 その魅力を聴いている人たちに分かりやすく伝えるにはどの様にしたらよいか、考えます。 特に子供たちに音楽を届ける活動は大好きです。クラス単位だと普段のホールでの演奏と は違い、子供たち一人一人と目を合わせ、会話することができます。音楽にできることは 限られているのかもしれません。それでも大好きな音楽の力を信じています。 僕ら演奏家や熊本県立劇場スタッフみんなの想いを乗せたアウトリーチが、子供たちに 元気や勇気を与え、傷ついた心の慰めになったら、といつも思っています。 コントラバスを担いで、大好きな音楽で子供たちと触れ合える日を楽しみにしています。 亀子政孝 コントラバス 岡村彬子 メゾソプラノ 春日香南 クラリネット 近年ご協力 頂いている アーティス ト

国立音楽大学音楽学部演奏学科鍵盤楽器専修卒業、洗足学園音楽大学大学院音楽研究科ピアノ専攻修了。 自主企画の演奏会に出演する他、『Trio Colore』、Piano Duo『Duo Blanche』のメンバーとしても活動中。 熊本県立劇場「演奏家派遣アウトリーチ事業」協力アーティスト。 現在、演奏活動の他後進の指導も行っている。 10 歳より箏、16歳より三絃を藤川いずみ氏に師事。17絃と 20 絃を東京の宮越圭子氏に師事。くらしき 作陽大学音楽学部日本伝統芸能専修卒業。NHK邦楽技能者育成会第 55期修了。NHK邦楽オーディショ ン合格。第 22 回賢順記念くるめ全国箏曲コンクール賢順賞 ( 第一位 ) 受賞。第 51回熊本県文化懇話会 新人賞受賞。第27 回くまもと県民文化賞夢部門受賞。 東京藝術大学、ドイツ国立カールスルーエ音楽大学卒業、オーストリア国立ザルツブルグ・モーツァル テウム音楽大学大学院修了。プラハの春国際コンクール入賞、委託作品賞(チェコ)など数々のコンクー ルで入賞。元オーストリア・グラーツ州立歌劇場オーボエ奏者。令和 3・4年度熊本県立劇場演奏家派 遣アウトリーチ事業登録アーティスト。 令和3・4年度の登録アーティストに選んでいただきました、お箏の小路永和奈です。今回の 募集から邦楽も候補に入ったとのことで、たくさんの子どもたちにお箏の音色を聴いてもらいた いと思い、応募しました。 オーディション後の研修で、専門の方々からたくさん助言をいただき、とても充実した、実り ある時間を過ごさせていただきました。私1人では考えつかない素敵なプログラムになり、小 学校や中学校での実践も、子どもたちと楽しく過ごさせてもらっています。 もともとMCが苦手なのですが、しゃべり方の工夫も教えていただけたおかげで、子どもた ちからの反応もすごく返ってくるので、これまでの演奏のときより、子どもたちとの心の距離が 近いような気がして、嬉しく思います。 このありがたい機会を1つ1つ大切にして、たくさんの子どもたちにお箏の魅力を伝えてい けたらいいなと思います。 アウトリーチの最大の魅力は、狭い空間で子ども達の目の前で演奏をすることで、ホールでの コンサート以上に双方向のコミュニケーションが取れることだと感じています。 ピアノは音楽室には必ずあるような比較的身近な楽器ですが、ピアノの内部にあるアクション の模型を見たり、クイズを出題したりする等、様々な体験活動を通してピアノの構造を知っても らい、これまで以上にピアノの音に耳を傾けて音楽を聴いてもらえるように工夫しています。 世の中には数えきれないほどの音楽がたくさんありますが、誰もが知っているクラシック音楽 はそこまで多くはありません。しかし、知らない曲であっても『音楽の持つ力』によって私達は 心を震わせ、異世界への旅をすることが出来ます。アウトリーチをきっかけにこれからの人生を 音楽で彩りのある豊かなものにして欲しいと願っています。 この度、熊本県立劇場のアウトリーチ事業の登録アーティストとして、この事業に関わること が出来て、とても嬉しく思っています。 私がアウトリーチ事業に参加したいと思ったきっかけは、私自身も子供を授かり、育児をする 中で、子供たちにオーボエの楽器について、音楽の魅力について伝えたいという想いが出てきた からです。本格的に学び始めて分かったクラシック音楽の奥深さや面白さ、7年間の留学生活を 通して学んだ事などを子供たちに伝えることが出来、子供たちがクラシック音楽に興味を持つ きっかけとなればと思います。 実際に研修が始まり、授業内容を考えるようになってからは、効果的に伝わるための選曲、話 の順序、言葉の選び方など、私自身も大変勉強になりました。 試行錯誤しながら、この機会を大切にしたいと思っています。 若木麻有 オーボエ 小路永和奈 箏 山本亜矢子 ピアノ

K U M A M O T O P R E F E C T U R A L T H E A T E R これまでの実績 令和 4 年度から参加する予定の地域 演奏家派遣アウトリーチ事業に参加した地域 これまでに参加した地域 合併前の市町村を含みます ※ (財)地域創造の主催で、公共 ホール音楽活性化アウトリー チフォーラム事業を実施。 ※県立劇場は共催。 県立劇場の主催事業として 「演奏家派遣アウトリーチ 事業」をスタート。 第1 期登録アーティストの オーディションを実施。県 立劇場が募集・育成した アーティストによるアウト リーチをスタート。 【第 1 期登録アーティスト】 木野聖子(打楽器、マリンバ) 齋藤美紀(ピアノ) 広瀬祐子(ヴァイオリン) 山田善裕(トロンボーン) 第2 期登録アーティスト のオーディションを実施。 【第 2 期登録アーティスト】 亀子政孝(コントラバス) 辻由美子(ソプラノ) 徳田(春日)香南(クラリネット) 第 3期登録アーティスト のオーディションを実施。 【第 3 期登録アーティスト】 緒方愛子(ヴァイオリン) 西口新一郎(サクソフォン) 山本亜矢子(ピアノ) 第 4 期登録アーティスト のオーディションを実施。 【第 4 期登録アーティスト】 村田貴洋(サクソフォン) 山﨑明(サクソフォン) 平成 16年 平成 17年 平成 20年 平成 23年 平成 25年 平成 28年 第5 期登録アーティスト のオーディションを実施。 【第 5 期登録アーティスト】 池澤真子(ソプラノ) 岡村彬子(メゾ・ソプラノ) 小路永和奈(箏) 若木麻有(オーボエ) 令和 2年 演奏家派遣アウトリーチ事業の変遷 令和 4 年 3 月までの累計 実施コマ数: 590コマ 参 加 人 数:31,214人 公益財団法人熊本県立劇場 熊本県立劇場事業グループ 株式会社ジャム 〒862-0971熊本市中央区大江2-7-1 www.kengeki.or.jp 【 発 行 】 【編集・デザイン】 【 協 力 】 熊本県立劇場演奏家派遣アウトリーチ事業のご案内 発行日:令和4年3月31日 演奏家派遣 アウトリー チ事業・こ れまでの実 績 広がるアウトリーチの輪 令和4年3月版

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