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館長室から

MESSAGE

令和6年新年のご挨拶

 年明け早々の能登半島地震で、熊本地震の記憶が甦った方々も多かったのではないでしょうか。この春で熊本地震からまる8年を迎えますが、県民の皆さんは、この間のコロナ禍も含めて多難な歳月をくぐり抜けて来られたと思います。

 県立劇場も、そうした難局を一つ一つ克服する過程で県民に寄り添い、県民の「心の復興」に努めてまいりました。さらに未曾有のコロナ禍で劇場空間の多様で柔軟な利用形態を提供するとともに、デジタル技術を駆使した情報発信にチャレンジしてまいりました。

 この8年は、一言で言えば、逆境の8年でしたが、そのような中でも新たな劇場の姿、未来の劇場のあり方を模索していく過程でもありました。それは、劇場が、県民の日常の暮らしと共鳴し合い、豊かさの新たな価値を共に創造していく「共生の広場」へと発展していくことを示唆しています。

 ただ、開館から41年が経過する劇場は、その持続的な維持、管理のために不可欠な修復などが避けられず、工事期間中は県民の皆さんにご不便をかけてしまわざるをえません。それでも、劇場のスタッフ一同、劇場の管理、運営に努め、工事期間中もアウトリーチ事業などの館外活動を積極的に推し進める「動く劇場」を届けてまいります。今後も、劇場から離れた地域には「動く劇場」を届けるとともに、地域の皆さんとの交流深めて、地域に根ざした文化や芸能、芸術の創造に貢献する所存です。

 ご承知の通り、熊本県では空港もリニューアルされて、内外ともに九州のハブにふさわしい交通の要衝に生まれ変わろうとしています。また内外の世界的企業の生産拠点として九州のみならず、東アジア地域でも重要なサプライチェーンの拠点になりつつあります。

 こうした交通や製造業のより広域的かつ国際的な発展は、熊本県全体の底上げに資するとともに、それにふさわしい県民全体の文化・芸術の理解と普及が必要とされています。そのための最大の拠点としての劇場の存在意義は、益々大きくなっており、こうした九州の、西日本の、さらに東アジア地域の文化・芸術のハブとしての県立劇場への脱皮が課題となっています。

 同時に、今後、熊本県内の地域間格差が残り、過疎地域の文化や伝統芸能が廃れ、それが過去の歴史となっていくことが危惧されています。少子高齢化と過疎化、そして地域に固有の文化や伝統の担い手の減少にどう対応していくのか。人材育成の面から劇場はこれまで以上に過疎地域の文化振興に努めてまいります。

 劇場は、こうした時代の先端的な課題に応えつつ、さらに地域の特色に根ざした文化・芸能の人材育成にも人的・物的資源を投入し、熊本県全体の文化的な底上げの推進力になっていく所存です。

 定量的な指標では計りがたい文化や芸術、芸能は多様性と質的な成長が重視される社会の「幸福感」のバロメーターです。劇場を通じて県民の皆さんが潤いのある日常を享受していただけるよう、劇場は多彩な公演を企画、制作するとともに、「共生の広場」さらに「動く劇場」として皆さんとともに歩んでゆく所存です。

 県民の皆さんのご理解とご協力をお願いするとともに、ご健勝を心より祈念しております。

館長あいさつ

熊本県立劇場館長

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FOYER - 季刊誌「ほわいえ」