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館長室から

MESSAGE

熊本県立劇場 蘇る劇場に向けて
館長あいさつ

 熊本を襲った大地震から5年目のあの日が近づいてきました。県民の皆さんの胸にはどんな思いが去来しているでしょうか。公助、共助、自助が絡み合いつつ、着実に「創造的復興」へと地ならしができつつあった矢先、新型コロナウイルスの拡大が暗い影を落とし、また昨年夏には人吉・球磨地方を中心に甚大な自然災害に見舞われました。これでもか、これでもかと、熊本を襲う災厄の連続に心が折れるような日々が続いたのではないかと思います。

 県民の集う「広場」としての劇場を自任し、芸術と文化の振興と普及、その担い手の育成と潤いのある暮らしへの貢献を目指してきた劇場にとっても、度重なる災厄は震撼すべき出来事でした。芸術や文化は、平穏な時代だけに享受されるぜい沢品ではありません。いやむしろ、甚大な災害や疫病、感染症の蔓延するような非常時においてこそ、失われてはならない「心のワクチン」でもあります。それが喪失するようなことがあれば、社会は澱み、不安や猜疑が人と人との関係をささくれだったものにしてしまいかねません。

 特に実際のワクチン接種が始まったとはいえ、コロナ禍の終わりが見えない中、引きこもりがちな女性や子供、高齢者には「心のワクチン」とも言える芸術や文化を心置きなく享受できる機会が保証されなければなりません。また、今も被災地で呻吟する方々に音楽や踊り、演劇や芸能を通じた、共に笑い、共に涙し、そして共に感動し、生きる歓びを分かち合う機会が確保されなければなりません。

 リニューアルした劇場は、コロナ禍の中でも、「新しい日常」にふさわしい音楽や演劇、 パフォーマンスの舞台を模索し、また映像による配信やアウトリーチ、野外でのパフォーマンスを交えて、変則的な事態の中でも、いやそうであるからこそ、熊本の文化と芸術を より積極的に発信し、同時に、困難な状況あるアーティストをはじめ、多くの方々に発表の機会を設け、また将来の有為な文化・芸術関係者の育成に挺身していく所存です。どうか県民の「広場」としての劇場に気軽に集っていただきたいと心より念じています。

熊本県立劇場館長

2021年3月20日

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FOYER - 季刊誌「ほわいえ」